大手海外取引所HTX(旧Huobi)に関連すると識別されたアドレスから、BinanceやCoinbaseのユーザーに向けて少額のUSDTが送金され、受け取った一部の口座で凍結やコンプライアンス審査が発生しているとWeb3ジャーナリストの伊藤健次氏(@it0ken)が2026年8月19日に報告しました。
現時点で日本人の被害報告はほぼありませんが、Bitget・MEXC・KuCoin・LBankなど、金融庁から無登録営業で警告を受けている海外取引所を利用したことがある方には無関係の話ではありません。この記事では、何が起きているのか、そして今からできる対策を整理します。

これ以上、海外取引所の利用履歴を増やしたくない方は、金融庁に登録された国内取引所OKJの始め方を参考に、日本円の入金から売買までを国内で済ませる方法もあります。
何が起きているのか
HTXは、Binanceが世界最大級の取引所になる以前から「Huobi」の名称で世界有数の取引所として利用されてきた老舗の海外取引所です。現在は英国やEUの規制・制裁対象となっています。
伊藤氏の投稿によると、HTX関連と識別されたアドレスから、主にBinanceやCoinbaseのユーザー口座に向けて少額のUSDTがランダムに送金される事象が発生しており、受け取った一部のユーザーで口座凍結やコンプライアンス審査が発生しているとのことです。原因は現時点で不明で、HTX側はこの送金への関与を否定しています。
※この事象自体は、現時点で伊藤氏の投稿以外に独立した報道での確認ができていません。続報が出次第、本記事も更新します。
なぜ日本人にも関係あるのか
Bitget、MEXC、KuCoin、LBankは、金融庁が無登録で日本居住者向けに暗号資産交換業を行っていたとして警告を発出している海外取引所です。2024年11月28日、金融庁はKuCoin・bitcastle・Bybit Fintech・MEXC Global・Bitget Limitedの5社に警告書を発出し、それより前の2024年6月14日にはLBank Exchangeにも同様の警告を発出しています。警告後、Apple・Googleへのアプリ削除要請も行われ、日本のApp Storeから該当5社のアプリが削除されています。
これらの取引所を利用したことがある方は、「もう使っていないから大丈夫」とは言い切れない可能性があります。伊藤氏は、今回のような不審な送金を受け取ったり、ハッキング等で問題のあるアドレスと接点が生まれたりした場合、国内取引所側で確認や審査の対象となる可能性を指摘しています。過去の利用履歴や資金経路をどこまで問題視するかの判断は、国内取引所側が握っているためです。
HTXはEUの制裁対象に。Binanceは16の業者との送受金を止めた
HTX(運営会社 Huobi Global S.A.)は、EUの対ロシア制裁(第21次パッケージ)で「取引禁止」の対象になり、2026年8月23日からEU域内の人・企業はHTXと取引できなくなりました。EU理事会が2026年7月23日に採択した理事会規則(EU)2026/1848が、HTXを「ロシアへの制裁の目的を大きく損なっている」域外の暗号資産サービス業者の一覧(附属書XLV)に加えました。
これは資産凍結ではなく、取引の禁止です。EU・EEA・スイスの国民とそこに住む人は、一覧に書かれた適用日(HTXは2026年8月23日)から3か月以内に申請すれば、口座の解約や資金の引き出しに必要な取引を、各国の当局が許可できるとされています(同規則 第5ad条4項)。英国はこれより前の2026年5月26日に、Huobi Global S.A.をロシア制裁の対象に指定しています(英国政府の指定一覧)。
これを受けてBinanceは、2026年8月14日付の公式告知(日本からは表示されないことがあります。保存版:Internet Archive(2026年8月17日保存)、2026年10月17日確認)で、HTXを含む16の業者との送受金を、日付ごとに止めると発表しました。日付以後にこれらの業者と送受金しようとすると、取引が保留されて審査の対象になり、審査の間はウォレットに制限がかかることがあるとしています。
| Binanceが止めた日 | 対象の業者 | 元になった制裁 |
|---|---|---|
| 2026年8月7日 | Shelbit(Shelbit General Trading LLC)、Aban Tether Exchange | 米財務省(OFAC)が8月7日にイラン関連で指定 |
| 2026年8月13日 | A7 Nigeria、A7 Africa、PilotFinance Ltd | EU 第21次制裁(附属書XLV、8月13日から適用) |
| 2026年8月23日 | HTX(Huobi Global SA)、EXMO Ltd、Rapira、Aifory Pro、ABCeX、WhiteBird、NoOnecrypto、Tradex、Monease、BitPapa、Exnode | EU 第21次制裁(附属書XLV、8月23日から適用) |
出典:Binance公式告知「Important: Transactions with Certain Crypto Platforms」(2026年8月14日20時・日本時間。日本からは表示されないことがあります。保存版:Internet Archive(2026年8月17日保存)。題名・日付・16の業者名を保存版で2026年10月17日に確認)、EU官報 理事会規則(EU)2026/1848 附属書VIII(2026年7月23日。規則(EU)No 833/2014の附属書XLVに、表の14社と適用日を加えた部分。2026年10月17日確認)、米財務省のプレスリリース(2026年8月7日)、欧州委員会「EU adopts 21st package of sanctions against Russia」(2026年7月23日)。「元になった制裁」の列は、Binanceの告知には書かれていないため、当サイトが各国の公表資料と照らし合わせたもの。いずれも2026年10月2日確認。
EUの制裁は、EU域内の人・企業やEUで行う取引が対象で、日本に住む人に直接の法的な義務はありません。ただ、送る相手の取引所がこうした制裁を守るために送受金を止めている以上、HTXと送受金した資金は、Binanceなど海外の大手取引所で保留・審査の対象になりうるという点は日本の利用者にも関係します。
Bitgetも10月16日に「口座終了」を発表。制裁対象の業者と直接やり取りしない
Bitgetは2026年10月16日、制裁の対象になっている取引所・業者との入金・出金について、取引を拒否したうえで口座を終了し、サービスを止めると発表しました。発表はBitgetの繁体字公式Xの投稿(2026年10月16日21時12分、日本時間)です(2026年10月17日確認)。
Bitgetは8月にも同じ業者への対応を出していましたが、2026年8月15日のBitget公式サポートの告知は「審査の強化または拒否」で、口座終了は「つながる可能性がある」という書き方でした(2026年10月17日確認)。10月16日の発表では、一覧の業者と直接入出金した場合は、口座を終了するとはっきり書いています。資金の出どころや送り先、途中で使った業者が一覧の業者と関係しているだけでも、審査や拒否の対象になり、審査の間は入金・出金・取引などが一時的に制限されます。
| 区分 | Bitgetの一覧に入っている主な業者(10月16日時点) |
|---|---|
| 上のBinanceの表と同じ16業者 | HTX(Huobi Global SA)、EXMO、Rapira、Aifory Pro、ABCeX、WhiteBird、NoOnecrypto、Tradex、Monease、BitPapa、Exnode・Exnode Pay、Shelbit、Aban Tether Exchange、A7 Africa、A7 Nigeria、PilotFinance |
| 8月15日の告知に無く、10月16日の一覧で増えた名前 | Tokenspot CJSC、Xeltox Enterprises(決済サービスの cryptomus.com と heleket.com)、BitBank3(bitbank.com) |
出典:Bitget繁体字公式X(2026年10月16日)、Bitget公式サポート「Bitget Continues to Implement Additional Controls on Sanctioned Entities」(2026年8月15日)。いずれも2026年10月17日確認。一覧は20件ですが、Xeltox Enterprisesは2つのドメイン(cryptomus.com・heleket.com)で2行あるため、事業者としては19です。Bitgetは、この一覧は参考で、完全なものでも固定のものでもなく、制裁の更新に合わせて予告なく変えるとしています。
一覧の「BitBank3(bitbank.com)」は、日本の登録業者のbitbank(ビットバンク)とは別の業者です。日本のビットバンク株式会社のサイトは bitbank.cc で、金融庁に登録された暗号資産交換業者(登録番号 第00004号)です(2026年10月17日確認)。名前が似ているだけなので、国内のbitbankとBitgetの間の送金がこの発表で止められるわけではありません。
読者がやることは1つです。Bitgetに口座がある人は、上の一覧の業者と直接、入金・出金をしないでください。HTXなどに資産が残っている人は、Bitgetへ直接送らず、一覧に無い送り先へ移してください。送る前に送り先が止められていないかは、次の節の2つで確かめられます。
なお、Bitgetは翌日の2026年10月17日に、これとは別に「一部の利用者へのサービスを終える」とも発表しています。日本居住者向けの日程(11月1日から決済専用、12月31日に強制決済)との関係は、Bybit・Bitgetの日本撤退と乗り換えガイドで整理しています。
送る前に確かめることは?
海外取引所どうしや、国内から海外への送金が止められないかは、次の2つで確かめられます。
- 送り先・送り元が、上の表の16業者に入っていないか:HTXに資産が残っている場合、Binanceへ直接送ると、保留・審査の対象になり、ウォレットに制限がかかることがあります。HTXからの出金は、HTX側の手続きで、表に無い送り先へ行ってください
- Bitgetと入出金するなら、送り先・送り元がBitgetの一覧(20件、19事業者)に入っていないか:Bitgetは2026年10月16日の発表で、一覧の業者と直接入出金した口座は終了するとしています。BitBank3(bitbank.com)は日本のbitbank(bitbank.cc)とは別の業者です
- 国内の取引所から、その海外取引所へ送れるか:国内から海外への送金は、Binanceの遮断とは別に「トラベルルール」で送れる・送れないが決まっています。国内9社と海外5社の組み合わせごとの可否はトラベルルールの送金可否一覧で確認できます
MEXCは、今回のEUの制裁と米財務省の指定の対象には入っていません。ただしMEXCは日本の暗号資産交換業の登録を受けていない海外の業者で、金融庁から2回(2023年3月・2024年11月)、関東財務局から1回(2025年6月)警告を受けています。2026年2月からは本人確認(KYC)をしないと入金・出金ができません。詳しくはMEXCは日本で違法?金融庁の警告と利用者の扱いで解説しています。
海外取引所の資産を、国内の登録業者へ移して日本円に戻す手順は海外取引所から日本円に戻す方法にまとめています。
今すぐできる対策
- 使っていない海外取引所の口座があれば解約する
- 解約はチャットや問い合わせメールから申請できる場合が多いので、解約が完了した証跡(メールやチャット履歴)をPDFなどで保管しておく
- 将来、国内取引所で口座凍結や審査が発生した際に、「すでに利用を終了している」ことを説明する材料になる
これから取引を続ける場合は、日本円の入出金から売買までを国内の登録業者の中で済ませれば、海外取引所の利用履歴を増やさずに済みます。登録業者の例として、OKJ(オーケーコイン・ジャパン、関東財務局長 第00020号)の口座開設の手順をOKJの始め方にまとめています。
海外取引所を利用しただけで国内取引所の口座が凍結されるのか、最悪の場合は資産が動かせなくなるのか、その線引きは現時点で国内取引所側から明確に示されていません。伊藤氏も「国内取引所にはこの線引きを明確にしてほしい」と述べています。
MEXCのアカウント自体が凍結・制限されたときの解除の手順と必要な書類は、MEXCで口座凍結・出金拒否されたときの解除方法にまとめています。
【8月24日追記】複数の独立ソースで確認、Krakenでも資金凍結
その後の報道により、この事象は当初の単一ソースの伝聞情報ではなく、複数の独立した海外メディア(CryptoTimes, Coinpaprika, COINOTAG, NullTX, ETHNews等)で確認できる規模の出来事に発展しています。Coinbaseだけでなく、Krakenでも約420万ドル相当の資金が凍結される事例が報じられました。
HTX側は改めて内部調査を実施し、公式の運用ウォレット・入金システムからは今回の少額送金を確認できなかったと発表していますが、原因はまだ完全には特定されておらず、アドレスのタグ付けミスやオンチェーンデータの誤読の可能性も排除していないとしています。
なお、SNS上では特定の人物がこの送金の背後にいるのではという見方も出ていますが、これはあくまで個人の推測レベルの情報であり、当サイトでは事実として扱っていません。
※本件は今後も状況が変化する可能性があるため、続報が出次第、引き続き更新します。
まとめ
HTX関連の送金をきっかけに、海外取引所の利用履歴が国内取引所での口座凍結・審査につながる可能性が指摘されています。まだ一次情報が限られる段階の話ではありますが、Bitget・MEXC・KuCoin・LBankなど金融庁警告対象の取引所を使ったことがある方は、未使用の口座を解約し、その証跡を保管しておくことをおすすめします。HTX本体も2026年7月にEUの制裁(8月23日から取引禁止)の対象になり、Binanceは8月23日からHTXとの送受金を止めています。HTXと送受金する予定がある人は、送る前に送り先・送り元が止められていないか確かめてください。Bitgetも2026年10月16日の発表で、HTXなど20件(19事業者)の業者と直接入出金した口座を終了するとしています。
関連記事: Bybit・Bitgetユーザー向け、海外取引所撤退時の乗り換え完全ガイドはこちら、トラベルルールの送金可否一覧もあわせてご覧ください。




