ステーブルコイン「JPYC」の累計発行額が2026年9月18日、100億円を突破した。発行元のJPYC株式会社が公式Xで発表したもので、前日にUpbit上場を機に一時4円台まで急騰した「デペッグ祭り」の余波が続く中での節目となった。
公式発表の内容
JPYC株式会社(X: @jpyc_official)は以下のように発表した。
JPYCの累計発行額が100億円を突破!
2025年10月の発行開始から、日本円ステーブルコイン「JPYC」の利用が拡大。
Ethereum / Avalanche / Polygon / Kaia
決済・送金・実店舗
国内外のウォレット・様々なサービス
JPYCが使える場所も、着実に広がっています。
2025年10月の発行開始からおよそ1年弱で累計100億円に到達した形だ。JPYC代表取締役の岡部典孝氏も自身のXで「次は流通額100億円を目指します!」と続けた。
JPYCを発行元から1円で発行・償還する手順と手数料、対応チェーンは、JPYCとは?発行・償還のやり方と手数料で解説している。
1日で25億円超──オンチェーンデータが示す実態
今回の100億円突破がいつ積み上がったのかは、オンチェーンデータから追うことができる。非公式ダッシュボード「JPYC info」によれば、累計発行額は9月16日確定値で約80億円だったのに対し、9月17日確定値では約105億円に到達している。つまり1日で約25億円が新規に発行され、償還(約1.9億円)を差し引いても約23.6億円の純増となった計算だ。
取引量の伸びはさらに大きい。日次の取引量は前日比で約113倍に急増し、発行の件数も140件から5,103件へと膨らんだ。
新規ユーザーの拡大ではなく、一部アドレスの裁定行動
注目すべきは、これほど発行・取引が急増したにもかかわらず、保有者数(ホルダー数)はほとんど動いていない点だ。9月16日の約7万2,412人から17日は約7万2,841人と、増加はわずか429人・率にして0.59%にとどまった。
発行量が2倍以上、取引量が113倍に膨らむ一方で保有者はほぼ増えていない——この事実は、新規ユーザーがJPYCを使い始めたというより、既存の一部アドレスが価格差を狙って大量に発行・移動させたことを示している。
発行が集中したのは「乖離した2チェーン」
発行額の増加をチェーン別に見ると、偏りがはっきりする。増加分の56.0%はPolygon、40.2%はEthereumが占め、この2チェーンだけで増加分の96%超を占めた。一方、Kaiaは2.1%、Avalancheはわずか1.6%にとどまっている。
この2チェーン(Polygon・Ethereum)は、9月17日にJPYCの価格が1円の想定水準から大きく乖離したチェーンと一致する。DEX上では一時3倍を超える価格差が生じ、18日未明の時点でもEthereumで1.72倍、Polygonで1.65倍の乖離が残っていた。逆に価格乖離がほぼ生じなかったAvalancheでは、発行の増加もごくわずかだった。
JPYC株式会社は9月17日夜、価格が乖離していたEthereumとPolygonの両ネットワークで発行予約を一時停止し、数時間後に復旧させている(Ethereumは19時15分ごろ〜23時20分、Polygonは21時30分に停止を告知し、18日0時15分に再開)。同社は停止の具体的な原因を公表していない。
利用者からは「資金が動かせない」との声も
裁定目的の発行が集中する中、一部の利用者からは資金が一時的に動かしにくくなったとの声もX上で見られた。なお、JPYC社の契約締結前交付書面(2026年9月24日改定)では、発行・償還の上限は1回あたり100万円で、1日あたりの上限はない(2026年5月15日に、発行の上限を「1日あたり100万円」から「1回あたり100万円」に変更)。
丸1日この状態で動かない、JPYC使えなさすぎ、シルバーウィークの間発行待ちの円は虚空に浮いたままなんですか、どうにかしてくさいよ。生活費も含めてほぼ全部JPYCになった状態だからどうすることも出来ない
この投稿の時刻や原因は特定できないが、JPYC社は前述のとおり9月17日夜に発行予約を一時停止していた。また書面では、発行・償還は原則として受付後すぐに行われるが、取引モニタリングなどのため翌営業日までかかる場合があるとされている。9月19日〜23日は土日と祝日が5日続くシルバーウィークで、18日(金)の手続きが翌営業日に回ると24日(木)になる計算だ。JPYC社は9月18日、手動での口座開設審査とサポート対応が通常より遅れているとも知らせていた。JPYCを日常的な決済・保管手段として利用する場合、こうした一時的な流動性の偏りが起こり得る点は理解しておきたい。
CEOの説明「特別な対策はしない、自然に戻る」
この状況について岡部代表は自身のXで次のように説明している。
何も対策しないです。1円で償還し続けていれば戻りますから。
また、裏付け資産の健全性についても「普通預金もたくさん持ってるし国債も短期ですぐ売れるのでALM的にも問題ないです!」と述べ、償還原資が普通預金と短期国債で構成されており、流動性に問題はないとの見解を示した。裏付け資産をすぐに現金化できる形で保有しているため、償還要求自体には応じられる状態だという説明だ。
ステーブルコインとしての意味
今回の一連の値動きは、短期的には利用者の一部に不便をもたらした一方で、日本円建てステーブルコインとしてのJPYCの存在感が急速に高まっていることの裏返しでもある。累計発行額100億円という規模は国内発の円建てステーブルコインとしては大きな節目であり、Ethereum・Avalanche・Polygon・Kaiaと複数チェーンに対応が広がっている点も、今後の実店舗決済・送金用途での普及を後押しする材料となる。
JPYCの基本的な仕組みや発行・償還の方法については、JPYCとは?発行方法・償還・手数料を解説で詳しく解説している。
JPYCを1円で発行・償還するには、JPYC EXでの口座開設(マイナンバーカードによる本人確認)が必要になる。
今後の注目点
- Ethereum・Polygonの価格が実際に1円ペッグへ収束するまでの日数
- 発行・償還の手続きの遅れについて、JPYC社の対応方針に変更があるか
- 「流通額100億円」という次の目標に向けた普及施策の内容
短期的な価格変動に一喜一憂するよりも、日本円ステーブルコインとしての実用面(決済・送金コストの低さ、実店舗での利用拡大)に注目していきたい。
まとめ
- JPYCの累計発行額が2026年9月18日、100億円を突破(オンチェーンでは約105億円)
- Upbit上場後の裁定取引集中により1日で約25億円が新規発行、純増は約23.6億円
- 保有者数の増加はわずか0.59%にとどまり、新規需要というより既存アドレスの裁定行動が中心
- 発行の集中はPolygon・Ethereumの2チェーン(価格が乖離したチェーンと一致)、両チェーンで発行予約を一時停止する場面も
- CEOは「特別な対策はしない、1円償還を続ければ自然に戻る」とコメント、裏付け資産の健全性も強調




