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ラグプルとは?Robinhood Chainで53銘柄・約29億円が抜かれたとされる手口と、ミームコイン詐欺の見分け方【2026年9月最新】

ミームコインの発行直後に足元の敷物が引き抜かれるラグプルを表すイラスト 詐欺・トラブル対処

「買った瞬間から下がり続けて、気づいたらほぼゼロになった」

ミームコインでこうした経験をした人は少なくありません。2026年9月27日、オンチェーン分析者のWazz氏(X:@WazzCrypto)が、Robinhood(ロビンフッド)が運営するブロックチェーン「Robinhood Chain」で、53銘柄のミームコインから少なくとも1,843万ドル(約29億円)が同じグループに抜き取られたとする調査結果を公開しました。

この記事では、Wazz氏の調査を報じたThe Blockなどの報道と、ローンチパッド「Pons(ポンズ)」の公式ドキュメント、Robinhood Chainの公式ドキュメントをもとに、「ラグプルとは何か」「今回どんな手口だったとされるか」「どこまでが確定か」「日本の自分は影響を受けるか」「次に同じ目に遭わないための見分け方」を順番に整理します。

この記事の結論(2026年9月29日時点)

  • ラグプルとは、トークンの発行者側が集まった資金を抜いて逃げる詐欺的な行為です。「足元の敷物(rug)を引き抜く(pull)」が語源です
  • Robinhood Chainの件は、分析者のWazz氏が「53銘柄・少なくとも約29億円が同じグループによるもの」と分析したものです。米メディアのThe Blockは53件のうち10件で同じ買い占めのパターンを確認しましたが、総額は独自に再現していません。RobinhoodとPonsの公式コメントは確認できていません
  • 指摘された手口は、発行者が選んだウォレットだけ「買い占め対策の税」を免除し、発行直後の1秒前後で供給量の最大86%を買い占めるものとされています
  • 自衛策は「発行直後に買わない」「上位ウォレットの保有割合を見る」「公式のコントラクトアドレスを確かめる」の3つが基本です。被害に遭ったら、記録を保存して警察(#9110)と消費者ホットライン(188)に相談してください

ミームコインを持っている人は日本の自分も影響を受ける?を、これから買う人は買う前の7つのチェックを先に読んでください。

ラグプルとは?仮想通貨の「持ち逃げ」の意味と3つの型

ラグプル(Rug Pull)とは、仮想通貨のプロジェクトやトークンの発行者側が、買い手から集まった資金を抜き取って逃げる詐欺的な行為のことです。英語の「pull the rug out(敷物を引き抜いて相手を転ばせる)」という言い回しが由来で、日本語では「持ち逃げ」「出口詐欺」とも呼ばれます。

ラグプルは、誰でも数分でトークンを発行できるミームコインの世界で特に多く起きています。ミームコインは、実際の事業や利用の裏付けがなく、話題性だけで値段が付くトークンです。発行者が「最初から売り抜けるつもり」でも、外から見分けるのは簡単ではありません。

ラグプルは、資金の抜き方によって大きく3つの型に分けられます。

型 何をするか 買い手に起きること
流動性の引き抜き 発行者がDEX(分散型取引所)に置いた売買用の資金(流動性)を一気に引き上げる 売りたくても相手がいなくなり、トークンが実質売れなくなる
売り抜け(ダンプ) 発行者側が安く大量に持っておき、値段が上がったところでまとめて売る 高値で買った人が大きく値下がりしたトークンを持たされる。今回のRobinhood Chainの件はこの型と指摘されている
売却の制限 トークンの仕組み(コントラクト)に、発行者以外が売れない・高い税がかかる細工をしておく 買えるのに売れない。「ハニーポット」とも呼ばれる

どの型でも共通しているのは、一度抜かれた資金は、ブロックチェーンの仕組み上ほぼ取り戻せないという点です。だからこそ、買う前に見分けることが一番の防御になります。

このほか、トークンを出す前にNFTを買わせて(ミントさせて)先にお金を集め、「取引所に上場する」「保有者にトークンを配る」と予告したまま運営が消える型もあります。見分け方はNFTのミントで集めて消える型で説明します。

Robinhood Chainで何が起きた?53銘柄・約29億円の概要

Robinhood Chainの件は、オンチェーン分析者のWazz氏が「2026年7月10日〜9月21日に発行された53銘柄のミームコインが同じグループによるもので、少なくとも1,843万ドル(約29億円)が抜き取られた」と分析したものです。Wazz氏は9月27日(日本時間27日夜)にXで調査結果を公開し、The Block、The Crypto Times、Cryptonomistなど複数の海外メディアが報じました。

Wazz氏の調査の要点(報道をもとにした日本語要約)

Robinhood Chainで7月10日から9月21日までに発行された53銘柄を、1つのグループによるものと判断した。抜き取られた額は少なくとも1,843万ドルで、これは「最低ライン」であり最終的な数字ではない。ほぼすべての発行で、70〜200個のウォレットの束が供給量の70%以上を買い占めていた。主な舞台はローンチパッドの「Pons V2」。これとは別に、今回のグループとはつながりが確認できない連続発行グループが少なくとも2つある。

出典:The Block(2026年9月27日)、The Crypto Times(9月28日)の報道をもとにCoin Mapが要約。元の投稿:Wazz氏のX投稿

報道されている数字を表にまとめます。円換算は1ドル=157.4円(9月29日朝のレート)で計算しています。

項目 内容(Wazz氏の分析・報道ベース)
期間 2026年7月10日〜9月21日(約2か月半)
対象 53銘柄のミームコイン(Robinhood Chain上)
抜き取られた額 少なくとも1,843万ドル(約29億円)※分析者の推計、第三者の監査は無い
同じグループと判断した根拠 資金の流れで45件、同じ秘密鍵の使い回しで4件、共通の集金ウォレットで4件
買い占めの規模 1銘柄あたり70〜200個のウォレットで供給量の70%以上。8月下旬以降の発行では82〜86%
額が大きかった3銘柄 CRUMBS 約312万ドル(約4.9億円)、LEGS 約290万ドル(約4.6億円)、PINK 約144万ドル(約2.3億円)
主な発行場所 Robinhood Chain最大のローンチパッド「Pons V2」
公式の反応 The Blockの記事公開時点でPons・Robinhoodからのコメントなし。本記事執筆時点(9月29日)でも確認できていない

Wazz氏が調べ始めたきっかけは、9月21日に発行された「DEED」というトークンでした。報道によると、9月14日に別のトークン「DRAFT」の保有者として並んでいた98個のウォレットから計179.88 ETHが集められ、別のウォレットを経由して、DEEDの発行40分前に50個のアドレスへ15.98 ETHが配られていたといいます。DEEDからは約199.8 ETH(約53.5万ドル、約8,400万円)が抜かれたと分析されています。

このとき「1つの銘柄で得た資金が、次の銘柄の買い占め資金に回っている」という流れが見つかり、そこからさかのぼって53銘柄がつながった、というのがWazz氏の説明です。約2か月半で53銘柄ということは、平均すると1.5日に1本のペースで新しいミームコインが出されていた計算になります。

どんな手口だった?「税の免除」と「発行1秒の買い占め」

指摘された手口の中心は、Pons V2に備わっている「買い占め対策の税」を、発行者が自分の用意したウォレットだけ免除していた点です。仕組み自体の欠陥ではなく、正規の機能が悪用されたとみられています。

Pons V2の「スナイプ税」とは

Ponsの公式ドキュメントによると、Pons V2で発行されたトークンには、発行直後の買いにだけかかる「スナイプ税(snipe tax)」があります。ボット(自動売買プログラム)が一般の人より先に買い占める「スナイプ」を割に合わなくするための仕組みです。

発行からの時間 買いにかかる税(公式ドキュメント) 免除されたウォレット
0秒(発行直後) 99% 0%
約1秒後 約25% 0%
約2秒後 約3% 0%
5秒後 0% 0%

問題は「免除」の部分です。公式ドキュメントには、発行したアドレスと手数料の受取先は自動で免除され、さらに発行者はトークンを作るときに、ほかのアドレスも免除対象として指定できると書かれています(チームが複数のウォレットで最初の買いを分ける用途を想定)。この指定は作成時に固定され、あとから追加できません。

Pons V2公式ドキュメントのスナイプ税と免除アドレスの説明
発行者は作成時に、発行アドレスと手数料受取先のほかにも免除するアドレスを指定できる、というPons V2の仕様(赤枠)。出典:Pons公式ドキュメント(2026年9月29日取得)

一般の人が発行直後に買おうとすると、最初の1〜2秒は税で大半を取られます。ところが免除されたウォレットは、同じタイミングで税なしで買えます。発行者だけが「スタートの号砲の前に走り出せる」状態です。

指摘された手口の流れ

Wazz氏の分析・報道で指摘された流れ

  1. 偽物で期待をあおる:本物のコントラクトアドレスを出す前に、同じ名前の偽トークンを出して話題を作る
  2. 免除ウォレットを仕込んで発行:Pons V2で発行するとき、15〜25個のウォレットをスナイプ税の免除対象に指定
  3. 1回の取引でまとめ買い:発行の1〜3ブロック後、1回の取引で免除ウォレット全部の分をまとめて購入。供給量の82〜86%を確保
  4. 一般の買いが入り値上がり:話題を見た人が買い、値段が上がる
  5. 売り抜け:束ねたウォレットから売って、ETH(イーサ)に換える
  6. 次の銘柄へ:得たETHを次の発行の買い占め資金に回す。最終的にイーサリアム本体へ移し、ステーブルコインのDAI(約23.1万DAI)に換えた例も報じられている

The Blockがオンチェーンのデータを確認したところ、8月下旬以降の9件の発行で、発行者が15〜25個のウォレットの税を免除し、そのウォレットが発行から1秒ほどで一斉に買っていたと報じています。ある1件では31個のウォレットが免除され、そのうち21個が発行から約1秒以内に買っていたとされます。

この手口では、発行者側が最初から供給量の8割以上を持っています。あとから買った人がどれだけ買い支えても、発行者がいつでも売り浴びせられるため、値上がりの「上限」は実質的に発行者が決めていることになります。

「同じグループの仕業」は確定?分かっていること・分かっていないこと

「53銘柄が同じグループによるもの」という点は、Wazz氏の分析結果であり、捜査機関や当事者が認めた事実ではありません。発行者の身元も明らかになっていません。情報の確かさを3段階に分けて整理します。

確かさ 内容 根拠
公式資料で確認できる Pons V2には発行直後の買いに最大99%の税があり、発行者は作成時に免除するアドレスを指定できる Pons公式ドキュメント
メディアが一部を独自に確認 53件のうち10件で、免除ウォレットによる発行直後の買い占めのパターンがある The Block(オンチェーンデータを確認)
分析者の主張(未検証) 53件が同じグループによるもの/総額が少なくとも1,843万ドル Wazz氏の分析。The Blockは総額を独自に再現していないと明記
確認できていない 発行者の身元/RobinhoodとPonsの公式な見解や対応/資金の凍結・返金の予定 本記事執筆時点(9月29日)で公式発表は見つからない

また、報道によるとWazz氏は、今回のグループとは別に、つながりが確認できない連続発行グループが少なくとも2つあるとしています。9月28日には、セキュリティ企業のGoPlusも、Robinhood Chain上で過去30日に約949万ドルの取引があった「高リスクなミームコインの量産アドレス」を見つけたと注意を呼びかけたと報じられています。「今回の53銘柄を避ければ安全」ではないという点は覚えておいてください。

なお、抜き取られた資金の多くはETHの形で動いており、報道では「凍結できない資産」と指摘されています。USDTやUSDCのように発行会社が凍結できるステーブルコインと違い、ETHは誰かが止めることができません。

Robinhood公式のトークンなの?Robinhood ChainとPonsの関係

いいえ。今回の53銘柄はRobinhoodが出したトークンではなく、PonsもRobinhoodから独立したアプリです。名前に「Robinhood」と付いているため誤解されやすいので、関係を整理します。

名前 何か 運営
Robinhood Chain イーサリアム互換のブロックチェーン(レイヤー2)。2026年7月1日にメインネット公開。手数料(ガス)はETHで払う Robinhood(米国の証券・暗号資産会社)。Arbitrumの技術を使用
Pons Robinhood Chain上で、誰でもミームコインを作って売買できるローンチパッド Robinhoodとは別の独立したプロジェクト
53銘柄のミームコイン Pons等で発行された個人・グループのトークン 匿名の発行者

Robinhood Chainの公式ドキュメントは、このチェーンを「パーミッションレス(許可が要らない)」と説明しています。つまり、誰でもアプリを作り、トークンを発行できるチェーンです。さらに公式サイトでは、掲載している第三者のアプリについて「Robinhoodによる推奨・提携・保証ではない」「安全性や正当性について表明しない」と明記しています。

Robinhood Chain公式ドキュメントの第三者アプリに関する免責の記載
Robinhoodは、Robinhood Chain上の第三者のアプリについて推奨・提携・保証ではないと明記している(赤枠)。出典:Robinhood Chain公式ドキュメント(2026年9月29日取得)

Ponsはこの仕組みの上で急成長しました。CoinDeskによると、Ponsでは7月から9月初めまでに約64.6万個のトークンが作られ、発行手数料は約1ドルです。9月初めには1日の手数料収入が約595万ドルに達し、DefiLlamaの集計で暗号資産のプロトコル全体の4位になったと報じられました。発行が簡単で安いほど、詐欺目的の発行も紛れ込みやすくなります。Pons自身も公式ドキュメントで、発行されたトークンは利用者が作った実験的なもので、価値がなくなることがあると注意しています。

Robinhood ChainとPonsの基本と、チェーンが急拡大した背景はARB・UNIが上昇、Robinhood Chain急拡大の裏側で詳しく書いています。

日本の自分も影響を受ける?当てはまるかの確認方法

影響を受ける可能性があるのは、MetaMaskなどのウォレットを使ってRobinhood Chain上のミームコイン(特にPonsで発行されたもの)を7月10日〜9月21日ごろに買った人です。Robinhood Chainのトークンを持っていない人には、今回の件で直接の損失はありません。

Robinhoodの証券・暗号資産アプリは日本では提供されていません。一方で、Robinhood Chainはイーサリアムと互換性のある公開チェーンなので、MetaMaskなどの一般的なウォレットにネットワークを追加し、ETHをブリッジ(移動)すれば、日本からでもPonsのトークンを売買できてしまう構造です。Ponsの公式ドキュメントにも、利用できない国・地域の記載は見当たりませんでした。

当てはまるかを確かめる3ステップ

  1. ウォレットのネットワークを確認:MetaMask等のネットワーク一覧に「Robinhood Chain」(チェーンID 4663)を追加したことがあるか
  2. 取引履歴を確認:Robinhood Chainの公式エクスプローラー(robinhoodchain.blockscout.com)で自分のウォレットアドレスを検索し、7月10日〜9月21日にトークンを買った記録があるかを見る
  3. 報道された銘柄と照らし合わせる:CRUMBS・LEGS・PINK・DEED・DRAFT・EQUITYなど、報道で名前が出た銘柄を持っていないか。ただし同じ名前の別トークンがあるため、名前だけで判断しない(次の章で説明)

エクスプローラーで検索するのはウォレットの「アドレス」(0xで始まる文字列)だけです。秘密鍵やシードフレーズ(復元用の12〜24単語)は、どのサイトにも入力しないでください。「被害を調べます」「資産を取り戻します」と言ってシードフレーズを聞いてくる相手は、別の詐欺です。

ラグプル・ミームコイン詐欺の見分け方は?買う前の7つのチェック

ラグプルを完全に見抜く方法はありませんが、「発行直後に買わない」「保有の偏りを見る」「公式のアドレスを確かめる」だけで、今回のような手口の多くは避けられます。買う前に次の7つを確認してください。

# チェック項目 どこで見るか 危険なサイン
1 上位ウォレットの保有割合 エクスプローラーの「Holders(保有者)」、DEX Screener等 上位10〜20個のウォレットで過半を持っている。今回は70〜86%と指摘
2 発行直後の買いの集中 エクスプローラーの取引履歴(最初の数ブロック) 発行から数秒以内に、新しいウォレットが一斉に買っている
3 同じ名前のトークンが複数ある DEX Screener等でティッカーを検索 同じ名前で別のアドレスが複数。どれが本物か公式に示されていない
4 公式のコントラクトアドレス プロジェクトの公式X・公式サイト 「近日公開」とだけ言い、アドレスが後出し。SNSのリプライ欄のアドレスは偽物が多い
5 作成者税(クリエイター税) ローンチパッドのトークン画面 売買のたびに発行者へ入る税が高い。Ponsの公式ドキュメントも「取引前に確認を」と注意
6 発行者の過去 エクスプローラーで発行アドレスの履歴 短い間隔で次々と別のトークンを発行している
7 売れるかどうか 取引履歴で「売り」の記録があるか 買いの記録ばかりで売りが無い(売れない細工の可能性)

「同じ名前のトークン」は実際にある:CRUMBSの例

チェック3の実例です。DEX Screenerの公開データを9月29日に調べると、Robinhood Chain上には「CRUMBS」というティッカーのトークンが、少なくとも2種類(別のコントラクトアドレス)存在していました。

ティッカー トークン名 コントラクトアドレス(先頭と末尾) 最初の売買ペアの作成日
CRUMBS Hansel & Gretel 0xE0D0…5573 2026年7月11日
CRUMBS Crumbs 0x80bA…9136 2026年9月9日

出典:DEX Screener 公開API(2026年9月29日取得)。日付は日本時間。

報道からは、Wazz氏が分析したCRUMBSがどちらのアドレスなのかは特定できないため、ここでは「どちらが問題のトークンか」は判断していません。伝えたいのは、ティッカー(銘柄名)が同じでも中身はまったく別のトークンになりうるということです。今回のグループも、本物の前に同じ名前の偽物を出していたと指摘されています。買うときは必ず、公式が示したコントラクトアドレスと一字一句同じかを確かめてください。

チャートで見分けられる?

「ラグプル チャート」で検索する人も多いですが、チャートで分かるのは多くの場合「抜かれた後」です。典型的には、発行直後に急上昇し、ある時点で長い下ヒゲもなく一気に90%以上下がり、その後は取引がほとんど無くなる形になります。チャートを見て「まだ上がりそう」と感じた時点では、発行者側が持つ8割の売りがいつ出てもおかしくありません。チャートの形より、上のチェック1・2(保有の偏りと発行直後の買い)を先に見てください。

NFTのミントで集めて消える型:「上場予定」「トークン配布」の予告に注意

NFTを売って先にお金を集め、「近く大手取引所に上場する」「NFTの保有者にトークンを配る」と予告して期待をあおり、そのあと運営のXアカウントごと消える型のラグプルがあります。2026年10月にも、Xで「NFTをミントしたプロジェクトが、MEXCへの上場と保有者へのトークン配布を予告したあとにアカウントを消した」という報告が出ています(個人の投稿で、公式の発表や報道では確認できていません)。

ミント(mint)とは、NFTを新しく発行して手に入れることです。この型では、ミントの代金がそのまま運営の手に入ります。トークンはまだ存在しないので、上のチェック1〜7(保有の偏り・発行直後の買いなど)では見抜けません。見るべきなのは「予告が本当か」と「運営が誰か」です。

流れは次のとおりです。

  1. NFTをミントさせる:「今だけ」「保有者だけの特典」とあおり、ETHなどで代金を払わせる
  2. 上場とトークン配布を予告する:「○○取引所に上場決定」「NFTの保有者にトークンを配る」と発表し、NFTの値上がりや追加のミントを誘う
  3. 運営が消える:Xのアカウントや公式サイト、Discordが消え、上場もトークン配布も行われない

ミントする前、または予告を見たときに、次の4つを確かめてください。

確かめること どこで見るか 危険なサイン
取引所の公式のお知らせに上場の予定があるか 取引所の公式サイトのお知らせ。MEXCなら「お知らせセンター」の「新規上場」 「上場決定」と言うのはプロジェクト側だけで、取引所の公式のお知らせに出ていない
運営の身元 公式サイトの会社情報、チームの紹介、過去の実績 運営会社も担当者の名前も出ておらず、連絡先がXやDiscordだけ
Xのアカウントがいつ作られたか Xのプロフィールの「○年○月からXを利用しています」の表示 数週間〜数か月前に作られたばかりなのに、フォロワーや反応が急に多い。ただし古いアカウントを買い取ったり名前を変えたりして使う場合もあるので、作成日だけで判断しない
ミントの代金がどこへ流れるか エクスプローラー(Etherscan、Basescanなど)でNFTのコントラクトのアドレスを検索し、代金の引き出し(Withdraw)の記録と送り先を見る ミントが終わるとすぐ代金が引き出され、別のウォレットへ細かく分けて送られている

なかでも一番確かめやすいのが1つ目です。MEXCの場合、新しい銘柄の上場は公式サイトの「お知らせセンター」にある「新規上場」の欄に、銘柄名と取引開始の日時が載ります(2026年10月4日に確認)。取引所の公式のお知らせに無い「上場決定」は、取引所が認めたものとは言えません。「取引所の担当者とやりとりしている」と言うアカウントがあれば、MEXCの公式サイトの「MEXC検証(MEXC Verify)」で、そのXやTelegramのアカウントが本当にMEXCのものかを調べられます。

また、「トークンの受け取りはこちら」と案内される配布サイトにも注意してください。ウォレットをつないで承認(署名)した瞬間に、中の資産を抜かれる偽サイトの場合があります。うっかり承認してしまったときは、revoke.cashで承認を取り消す手順を、偽サイトの見分け方はMetaMaskを名乗る詐欺の見分け方を見てください。

被害に遭ったら何をする?相談先と税金の扱い

ラグプルで失った資金を取り戻せる可能性は低いですが、記録を残して公的な窓口に相談し、二次被害を防ぐことが大切です。次の順番で動いてください。

  1. これ以上お金を入れない:「買い支えれば戻る」「追加で入金すれば出金できる」といった誘いには乗らない。資産を一度に返せないと発表しながら新規の入金は続けるとした例に、BitradeXの出金停止(2026年8月15日から)があります
  2. 記録を保存する:ウォレットアドレス、取引のハッシュ(エクスプローラーのURL)、買った日時と金額、トークンのコントラクトアドレス、宣伝していたSNS投稿のスクリーンショット
  3. 公的な窓口に相談する:下の表の窓口へ
  4. 「返金します」業者に注意する:費用を先に払わせて何もしない「回復詐欺」の二次被害が報告されています
相談先 番号 こんなときに
警察相談専用電話 #9110 詐欺被害として相談したい(緊急時は110番)
消費者ホットライン 188 近くの消費生活センターにつないでもらいたい
金融庁 金融サービス利用者相談室 0570-016811(平日10〜17時) 暗号資産の取引についての相談(音声案内で暗号資産の項目を選ぶ)

日本の法律では、うそで信じ込ませてお金を出させた場合は詐欺罪(刑法246条)にあたる可能性があります。ただし、発行者が海外の匿名のウォレットの場合、特定して責任を問うのは非常に難しいのが現実です。

ラグプルの損失は税金で差し引ける?

個人の暗号資産の売買で出た損益は、2026年9月時点の制度では原則として「雑所得」です。雑所得の損失は、給与所得など他の種類の所得と差し引き(損益通算)できません。同じ年の暗号資産の利益など、ほかの雑所得の範囲でだけ相殺できます。

また国税庁は、盗難や横領による損失は「雑損控除」の対象になりうる一方で、詐欺や恐喝の場合は雑損控除を受けられないと説明しています。値下がりしたトークンを売って損失を確定させた場合の扱い、売れなくなったトークンの扱いは個別の事情で変わるため、税務署か税理士に確認してください。暗号資産の税金の計算は仮想通貨の税金シミュレーションで具体的な金額例を使って解説しています。

ミームコインに触れるなら、どこで買う?

今回のような手口の被害に一番遭いやすいのは、発行から数秒〜数日の「できたてのトークン」をDEXやローンチパッドで買うことです。ミームコインに触れるなら、どこで買うかでリスクが大きく変わります。

比べる点 発行直後のDEX・ローンチパッド 国内の登録取引所 海外の取引所(例:MEXC)
銘柄を載せる前の審査 × 無し(誰でも発行) ◎ 日本の規制に沿った審査 ○ 取引所ごとの上場審査
今回のような発行直後の買い占め × 起きうる ◎ 上場時点で発行から時間がたっている ○ 上場時点で発行から時間がたっている
偽物のトークンをつかむ × 自分でアドレス確認が必要 ◎ 取引所が銘柄を管理 ○ 取引所が銘柄を管理
扱うミームコインの数 ◎ 無数 △ 少ない ◎ 多い
日本の法律による保護 × 無し ◎ あり(金融庁登録) × 無し(無登録)

取引所に上場したミームコインでも、値動きが激しく価値がなくなるリスクは残ります。「なくなっても生活に困らない金額」だけにとどめるのが大前提です。そのうえで、日本の法律の保護を優先するなら国内の登録取引所を使ってください。国内の取引所で買うときの「販売所」と「取引所」の違いは販売所と取引所の違いで解説しています。

国内の登録取引所の例として、OKJ(オーケーコイン・ジャパン)はPEPE・TRUMP・SHIB・DOGE・MEMEなどのミーム系の銘柄も日本円で売買できます(2026年10月2日、OKJの公開APIで確認)。口座開設の手順と手数料はOKJの始め方にまとめています。

国内で扱っていない銘柄を海外取引所で売買する場合も、まず金融庁の登録業者の確かめ方で、使う取引所が警告リストに載っていないかを確かめてください。海外取引所は日本の金融庁に登録されておらず、日本の法律による保護はありません。上場後のミームコインも価格変動が大きく、価値がなくなるおそれがあります。

よくある質問

ラグプルは違法?逮捕されることはある?

ラグプルは、うそで信じ込ませてお金を出させた場合、日本では詐欺罪にあたる可能性があり、海外でも詐欺として立件された例があります。ただし「発行者が保有分を売っただけ」の場合は違法かどうかの判断が難しく、匿名の発行者を特定するのも困難です。法的にどうなるかにかかわらず、買い手のお金が戻ることはほとんどありません。

ラグプルのやり方(手口)はどんなもの?

代表的なのは「流動性の引き抜き」「発行者の売り抜け」「売れない細工」の3つです。今回のRobinhood Chainの件は、発行者が選んだウォレットだけ買い占め対策の税を免除して発行直後に大半を買い、値上がり後に売り抜ける「売り抜け型」と指摘されています。本記事では、見分けるために必要な範囲でだけ手口を説明しています。

「取引所に上場予定」「保有者にトークンを配る」と言うNFTは信用できる?

予告だけでは信用できません。まず、名前が挙がった取引所の公式サイトのお知らせに上場の予定が載っているかを確かめてください(MEXCなら「お知らせセンター」の「新規上場」)。取引所の公式のお知らせに無く、運営の身元も分からず、Xのアカウントも作られたばかりなら、ミントは見送るのが安全です。NFTを売って上場やトークン配布を予告し、そのまま運営が消える型のラグプルがあるためです。

Robinhood Chainそのものは危険?

Robinhood Chainは誰でもトークンを発行できる公開チェーンで、今回の件はチェーンそのものが攻撃されたものではなく、その上で発行されたトークンの問題と報じられています。ただし、誰でも発行できる以上、詐欺目的のトークンも混ざります。Robinhood自身も、チェーン上の第三者のアプリの安全性は保証していません。

Ponsは詐欺なの?

Ponsはミームコインを作って売買するための道具(ローンチパッド)で、Pons自体が詐欺をしたという報道はありません。今回は、Pons V2に正規の機能として用意された「スナイプ税の免除」が発行者に悪用されたと指摘されています。Ponsの公式な見解は、本記事執筆時点で確認できていません。

ミームコインや草コインはみんな詐欺なの?

すべてが詐欺ではありませんが、誰でも発行できるミームコインには詐欺目的のものが多く混ざっているのが現実です。DOGEのように長く取引されている銘柄もあれば、発行から数時間で価値がなくなる銘柄もあります。発行直後のものほどリスクが高いと考えてください。

抜かれたお金は取り戻せる?

取り戻せる可能性は低いです。報道によると、今回抜かれた資金の多くは発行会社が凍結できないETHで動き、一部はイーサリアム本体に移されてDAIに換えられたとされています。「取り戻せる」とうたう業者に費用を払う前に、警察(#9110)や消費者ホットライン(188)に相談してください。

まとめ(2026年9月29日時点)

  • ラグプルとは、トークンの発行者側が資金を抜いて逃げる詐欺的な行為
  • Robinhood Chainでは、分析者Wazz氏が「53銘柄・少なくとも約29億円が同じグループによる」と分析。The Blockは10件で手口のパターンを確認。RobinhoodとPonsの公式コメントは確認できていない
  • 手口は、Pons V2の「スナイプ税」を発行者のウォレットだけ免除し、発行直後に供給量の最大86%を買い占めて売り抜けるものと指摘されている
  • 自衛策は、発行直後に買わない・上位ウォレットの保有割合を見る・公式のコントラクトアドレスを確かめる
  • 被害に遭ったら、記録を保存して#9110・188へ。「返金できます」業者の二次被害に注意

※本記事のデータは2026年9月29日時点のものです。Wazz氏の分析は第三者の監査を受けたものではなく、今後の公式発表や追加の調査で内容が変わる可能性があります。新しい情報が出た場合は本記事を更新します。本記事は投資の助言ではありません。

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出典

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