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この記事の結論
クラリティ法案(Digital Asset Market Clarity Act、H.R.3633)は、ビットコインなどの暗号資産を「証券」と「商品(コモディティ)」に分け、SEC(米証券取引委員会)とCFTC(米商品先物取引委員会)のどちらが監督するかを決める米国の法案です。
米上院は2026年9月15日(日本時間16日午前3時台)、この法案の審議に入るための手続き投票を賛成49・反対50で否決しました。可決に必要な60票に11票足りず、民主党は出席議員の全員が反対しました。
法案は正式な廃案ではありませんが、2026年10月1日時点で再投票の日程は決まっておらず、2026年中の成立はかなり難しい状況です。その代わりに、CFTCとSECが今ある権限で暗号資産のルールづくりを進めています(CFTCは10月5日に事前通知(ANPRM)を出し、意見募集の段階です)。日本の法律ではないため、日本の口座や税金がすぐ変わることはありません。
本記事のデータは2026年10月1日時点のものです(9月25日に書いた内容を、10月1日に最新の状況へ更新しました)。米議会の記録(Congress.gov)、上院銀行委員会、SEC・金融庁の公式発表、CNBC・CoinDesk・The Blockなどの報道を確認して書いています。新しい動きがあれば追記します。
日本の投資家への影響(XRPの値動き・税金・海外取引所で確認すること)は、後半の「日本の投資家への影響は?」の章で整理しています。米国で法案が止まっても、日本居住者がBTCやXRPを日本円で売買する先は、これまでどおり金融庁に登録した国内の業者です。国内の登録業者の口座の作り方は、OKJ(オーケーコイン・ジャパン、関東財務局長 第00020号)を例にOKJの口座開設・始め方で解説しています。
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- クラリティ法案とは?暗号資産を「証券」と「商品」に分ける米国の市場構造法案
- クラリティ法案は否決された?9月15日(日本時間16日未明)の上院投票は49対50
- なぜ否決されたのか?争点は倫理規定・ステーブルコインの報酬・DeFi
- クラリティ法案はどんな道のりをたどった?下院通過から否決までの経緯
- 否決後のビットコイン価格はどう動いた?7.5万ドル台から一時8.7万ドル台へ回復
- CFTCとSECは何を始めた?法律を待たない「独自ルール」の動き
- クラリティ法案は今後どうなる?成立までの日程と3つのシナリオ
- 日本の投資家への影響は?日本の口座や税金はすぐには変わらない
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:クラリティ法案は否決、ルールづくりは当局の規則へ
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クラリティ法案とは?暗号資産を「証券」と「商品」に分ける米国の市場構造法案
クラリティ法案とは、暗号資産の取引市場を誰がどう監督するかを定める、米国で初めての包括的な「市場構造法案」です。正式名称は「Digital Asset Market Clarity Act of 2025」で、下院の法案番号はH.R.3633です。日本では「CLARITY法案」「クラリティ法」とも呼ばれます。
米国ではこれまで、ある暗号資産が証券なのか商品なのかがはっきりしていませんでした。そのためSECが取引所や発行者を「未登録の証券を扱った」として訴える例が続き、XRP(リップル)のように何年も裁判が続いた銘柄もあります。クラリティ法案は、この線引きを法律で決めることを目的にしています。

クラリティ法案の要点を表で整理
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Digital Asset Market Clarity Act of 2025(H.R.3633) |
| 目的 | 暗号資産を「デジタルコモディティ」と「証券にあたるもの」に分け、SECとCFTCの監督範囲を決める |
| CFTCの担当 | ビットコインなど「デジタルコモディティ」の現物市場。取引所・ブローカー・ディーラーはCFTCに登録 |
| SECの担当 | 資金調達のために売られるトークンなど、投資契約(証券)にあたる部分。発行者に情報開示を求める |
| 利用者保護 | 顧客の資産と会社の資産を分けて管理すること、リスクの開示などを取引業者に義務づける |
| DeFi(分散型金融) | 顧客の資産を預からないソフトウェア開発者を、送金業者などの規制から外す条項がある(上院案の争点の1つ) |
| 下院 | 2025年7月17日に賛成294・反対134で可決 |
| 上院 | 農業委員会(2026年1月29日)と銀行委員会(2026年5月14日)がそれぞれ可決。2026年9月15日の本会議の手続き投票で否決。10月1日時点で再投票の日程は未定 |
出典:Congress.gov(H.R.3633)、Latham & Watkins「US Crypto Policy Tracker」(2026年9月25日確認)
SECとCFTCの役割分担はどう変わる予定だった?
クラリティ法案の中心は、「ビットコインのように特定の発行者に頼らない暗号資産はCFTC」「資金調達の性質があるものはSEC」という役割分担です。報道によると、上院案では時価総額の約8割を占める主要16銘柄が、CFTCが監督するデジタルコモディティとして扱われる見込みでした(crypto.news)。
CFTC(商品先物取引委員会)
対象:デジタルコモディティ(BTCなど)の現物市場
登録するのは:暗号資産取引所・ブローカー・ディーラー
義務:顧客資産の分別管理、相場操縦の防止、リスクの開示
SEC(証券取引委員会)
対象:投資契約(証券)にあたるトークンの発行・販売
求めるのは:発行者による情報開示
ねらい:資金調達型のプロジェクトから投資家を守る
GENIUS法(ステーブルコイン法)との違い
クラリティ法案とよく並んで出てくるのが、2025年7月18日に成立したGENIUS法です。GENIUS法はステーブルコインだけを対象にした法律で、すでに施行に向けた手続きが進んでいます。クラリティ法案は、それ以外の暗号資産市場全体のルールを決める法案です。
| 比較項目 | GENIUS法 | クラリティ法案 |
|---|---|---|
| 対象 | 決済用ステーブルコイン(USDC・USDTなど) | 暗号資産の市場全体(BTC・ETHなど) |
| 決めること | 発行者の条件、裏付け資産、監督機関 | 証券か商品かの区分、SEC・CFTCの役割分担、取引業者の登録 |
| 上院の採決 | 2025年6月17日に68対30で可決 | 2026年9月15日の手続き投票で49対50で否決 |
| 現在の状態 | 2025年7月18日に大統領が署名し成立 | 上院で審議入りできず、成立の見通し立たず |
出典:Latham & Watkins「US Crypto Policy Tracker」(2026年9月25日確認)
クラリティ法案は否決された?9月15日(日本時間16日未明)の上院投票は49対50
はい、米上院は2026年9月15日、クラリティ法案の審議入りを決める手続き投票を賛成49・反対50で否決しました。投票は米東部時間の午後2時15分に始まり、日本時間では9月16日の午前3時台にあたります。可決には60票が必要で、11票足りませんでした(CNBC、The Crypto Times)。

誰が賛成し、誰が反対したのか
| 区分 | 人数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 賛成 | 49 | 全員が共和党 |
| 反対(共和党) | 4 | スーザン・コリンズ(メイン州)、ジョシュ・ホーリー(ミズーリ州)、ジェリー・モラン(カンザス州)、トム・ティリス(ノースカロライナ州) |
| 反対(民主党・無所属) | 46 | 出席した民主党議員の全員。法案の交渉に加わっていたギリブランド、ウォーナー、ブッカー、ワーノック、ガエゴ、アルソブルックス、コルテス・マスト各議員も反対 |
| 不投票 | 1 | クリス・クーンズ(民主党、デラウェア州) |
出典:The Crypto Times(2026年9月20日)、crypto.news。確認日:2026年9月25日
共和党は上院100議席のうち53議席を持っています。60票に届くには、民主党側から少なくとも7票の賛成が必要でしたが、1票も集まりませんでした。さらに共和党からも4人が反対に回りました。
「否決」は法案そのものの否決ではない
今回の投票は、法案の成立・不成立を決める最終採決ではありません。「法案の審議を始めるかどうか」を決める動議について、議論を打ち切って採決に進むための「クローチャー(討論終結)」の投票です。上院では少数派が議事を引き延ばせるため、審議に入るだけで60票が必要になります。
つまり、クラリティ法案は「上院で審議に入ることさえできなかった」というのが正確な状態です。日本の報道で「否決」と書かれているのは、この手続き投票の否決を指しています。
ティリス議員はなぜ反対に回ったのか
共和党のティリス議員は、最初は賛成票を入れたあと反対に切り替えました。上院の規則では、勝った側(今回は反対側)に投票した議員だけが、あとで「再審議の動議」を出せるためです。ティリス議員はこの動議を出しており、法案を本会議に戻す手続き上の道は残っています(DeFi Rate)。
なぜ否決されたのか?争点は倫理規定・ステーブルコインの報酬・DeFi
否決の最大の理由は、政府高官が暗号資産で利益を得ることを防ぐ「倫理規定」をめぐって、民主党と共和党が合意できなかったことです。共和党は投票前日の9月14日に、倫理規定を強めた最終案を出しましたが、民主党の反対は変わりませんでした。
| 争点 | 9月時点の法案の内容 | 反対・懸念の声 |
|---|---|---|
| 倫理規定 | 政府高官とその配偶者が暗号資産を発行・後援することを禁止。取り締まりは司法長官が担当し、2029年1月20日に期限切れ | 民主党:取り締まりを司法省だけに任せる仕組みでは実効性がない。大統領一家の暗号資産事業を止められない |
| ステーブルコインの報酬 | 銀行の預金利息のような利回りは禁止。取引・決済・流動性提供など「利用に応じた報酬」は認める | 銀行業界:抜け道になり、銀行から預金が流出する。より厳しい禁止を求める |
| DeFi・開発者の保護 | 顧客の資産を預からない開発者を、送金業者の登録やマネーロンダリング対策の義務から外す | 捜査当局:規制の空白を生み、犯罪に使われるおそれ |
| CFTCの体制 | CFTCの監督範囲を大きく広げる | 民主党:権限を広げる前に、与野党両方の委員がそろう体制が必要 |
出典:crypto.news(2026年9月4日時点の草案の解説)、DeFi Rate、CNBC。確認日:2026年9月25日
共和党のコリンズ、ホーリー、モランの3議員は、地方銀行からの「ステーブルコインの報酬で預金が流出する」という懸念や、法案の枠組みそのものへの疑問を理由に反対したと報じられています。つまり、民主党の協力を得るための倫理規定と、共和党内の銀行寄りの議員の懸念の、両方を解決できないまま投票に進んだことになります。
投票後、法案を推進してきた共和党のルミス議員は民主党の対応を批判しました。一方、交渉に加わっていた民主党の7議員は「超党派での取り組みは続ける」とする声明を出しましたが、次の投票の日程や修正案は示していません。
クラリティ法案はどんな道のりをたどった?下院通過から否決までの経緯
クラリティ法案は、下院を通過してから上院の本会議にたどり着くまでに1年以上かかりました。主な出来事を時系列でまとめます。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年7月17日 | 下院が賛成294・反対134で可決。同じ日にGENIUS法も下院を通過 |
| 2026年1月29日 | 上院農業委員会が自らの市場構造法案を12対11(党派別)で可決 |
| 2026年5月14日 | 上院銀行委員会が15対9で可決。民主党のガエゴ議員とアルソブルックス議員が賛成 |
| 2026年7月22日 | 上院の修正版の条文が公表される |
| 2026年8月8日 | 共和党のスーン院内総務が、9月15日の採決に向けてクローチャー動議を提出 |
| 2026年8月下旬 | ホワイトハウスの支持表明の報道などで採決への期待が高まり、XRPが週間40%超、イーサリアムが24時間で約20%上昇 |
| 2026年9月14日 | 法案の提案者が、倫理規定を強めた最終案を公表 |
| 2026年9月15日 | 手続き投票で49対50の否決。ティリス議員が再審議の動議を提出 |
| 2026年9月17日 | 交渉に加わっていた民主党の7議員が「後退だが、終わりではない」とする声明。同じ日、CFTCが暗号資産市場の規則をホワイトハウスの審査に提出 |
| 2026年9月23日 | 米財務長官の元顧問が、法案を「ほぼ死んでいるが、完全には死んでいない」と表現 |
| 2026年10月1日 | 再投票の日程も、新しい修正案も示されていない |
出典:Latham & Watkins、上院銀行委員会(2026年5月14日)、Paul Hastings、DeFi Rate、The Crypto Times(9月23日)。確認日:2026年10月1日
上院では、銀行委員会と農業委員会がそれぞれ別の法案を可決していたため、2つを1本にまとめる作業が必要でした。もともと上院は8月の夏季休会前の採決を目指していましたが、合意がまとまらず9月にずれ込みました。8月下旬の相場の盛り上がりについては、イーサリアム約20%急騰とCLARITY法案の記事や、ホワイトハウスでの暗号資産企業CEO会談の記事でも解説しています。
否決後のビットコイン価格はどう動いた?7.5万ドル台から一時8.7万ドル台へ回復
ビットコインは否決直後に下がったものの、その後1週間で否決前を上回る水準まで戻しました。否決と同じ週に、米FOMC(連邦公開市場委員会)の利上げも重なっています。
| 日付 | ビットコインの動き | 主な材料 |
|---|---|---|
| 9月15日 | 8万ドル近くから75,850ドルへ下落(24時間で約4.2%安) | クラリティ法案の否決。Coinbase株は6.7%安、Circle株は8%安 |
| 9月16日 | 一時7万5000ドル台 | FOMCが0.25%の利上げを決定(2023年7月以来) |
| 9月19日 | 一時81,000ドルを突破(24時間で約6.4%高) | 空売りの買い戻し、CFTC・SECの独自ルールの動き |
| 9月21日 | 一時87,000ドル台 | 米国の現物ビットコインETFに1日で約9.99億ドルが純流入 |
| 9月25日 | 84,000ドル台で推移 | — |
| 10月1日 | 84,000ドル台で推移(9月22日以降は8.3万〜8.7万ドルの範囲) | 再投票の日程は示されず、法案の材料で大きく動く場面はなかった |
出典:CoinDesk(2026年9月15日)、CoinGecko(9月25日・10月1日の価格、9月22日以降の日足)。9月16日〜21日の動きは当サイトの過去記事の集計による

否決は悪い材料でしたが、売りは長く続きませんでした。理由として、ビットコインはもともとCFTCが「商品」として扱ってきた資産で法案がなくても位置づけが大きく変わらないこと、そしてCFTCとSECがすぐに独自のルールづくりに動いたことが挙げられています。米ストラテジーのマイケル・セイラー氏は、ビットコインはすでにCFTCが商品として扱っていると投票直後に発言しています(CoinDesk)。
9月22日から10月1日までは、ビットコインは8万3,000〜8万7,000ドルの範囲で推移しています(CoinGeckoの日足、10月1日確認)。ただし、否決の週には1週間で1万ドル以上動いており、値動きの大きさは変わっていません。規制と金利のニュースで相場が大きく振れる時期は、レバレッジ取引の損失も膨らみやすくなります。利上げの内容はFOMC利上げの記事、ETFへの資金流入はビットコインETFに1日約1,570億円流入の記事で詳しく解説しています。
CFTCとSECは何を始めた?法律を待たない「独自ルール」の動き
否決から48時間以内に、CFTCとSECは今ある法律の権限で暗号資産のルールづくりを進めると表明し、実際に手続きを始めました。クラリティ法案が決めるはずだった内容の一部を、規則(行政のルール)で先に作る動きです。
CFTC:暗号資産市場の規則をホワイトハウスの審査へ提出(官報への掲載はまだ)
CFTCのマイケル・セリグ委員長は、投票の翌日にXで「既存の法律上の権限を使って、暗号資産の市場構造の実現を助ける」という趣旨の声明を出しました。セリグ委員長は投票前から「クラリティ法案が成立してもしなくても規則づくりを進める」と話しており、現政権の任期中に規則を完成させる目標を示しています(Paul Hastings、The Block)。
9月17日、CFTCは次の2つの規則を1つの案件(規則番号RIN 3038-AF80)として、ホワイトハウスの情報・規制問題局(OIRA)に審査のため提出しました。OIRAの登録上は、正式な規則案(NPRM)の前の「プレルール(prerule)」の段階で、10月1日時点では官報(Federal Register)に載っておらず、意見募集も始まっていません(The Defiant、DeFi Rate)。
| 規則の名前 | 報道されている主な中身 |
|---|---|
| Regulation Crypto Asset Markets(暗号資産市場の規則) | 暗号資産の取引所を登録制にし、取引の監視、相場操縦や見せかけの売買の防止、運営体制の基準を求める。米国内でレバレッジ取引を扱える形を想定 |
| Regulation Crypto Asset Transactions(暗号資産取引の規則) | 個人のレバレッジ取引について、リスクの開示、顧客資産の保管、決済の方法などのルールを定める |
出典:Genfinity(2026年9月18日)、The Crypto Times。規則の本文はまだ公表されていない(10月1日時点)
今後は「ホワイトハウスの審査 → CFTCの委員会での採決 → 官報への規則案の掲載と意見募集(パブリックコメント) → 最終規則」の順に進みます。中身が確定するのはその後で、どの段階もまだ日程は公表されていません。
【10月9日追記】CFTCは10月5日(米国時間)、「暗号資産取引の規則(Regulation CTX)」と「暗号資産市場の規則(Regulation CAM)」について、正式な規則案の前の段階にあたる「事前規則制定通知(ANPRM)」を公表し、意見募集を始めると発表しました。意見募集は官報に載った日から60日間です。「暗号資産市場(CAM)」という新しい登録区分を作る案も含まれています。ただしANPRMは「何を規則にするか意見を聞く」段階で、規則の中身はまだ決まっていません。今後は「ANPRMの意見募集 → 規則案(NPRM)→ 最終規則」の順に進みます。法案の再投票は10月8日時点でも日程が決まっていません。
SEC:トークン化株式の取引に「イノベーション免除」
SECは9月17日、ブロックチェーン上で米国株をトークンにして取引する場について、条件付きで取引所規制の適用を外す「イノベーション免除」を出しました(SEC公式発表 2026-90)。許可制のプールでの取引に限り、銘柄数や取引量の上限つきで認める期間限定の措置です。アトキンスSEC委員長は、この免除を恒久的な規則づくりへの「橋渡し」と位置づける声明を出しています。
SECは否決より前の2026年8月18日にも、暗号資産を使った資金調達のルール案「Regulation Crypto Assets」を公表しています。4年間で最大500万ドルまでの小さな資金調達や、12か月で最大7,500万ドルまでの資金調達を、通常の証券登録なしで認める2つの免除と、発行者が約束した開発を終えたトークンを証券の扱いから外す「セーフハーバー」を盛り込んだ案です(米議会調査局(CRS)2026年9月10日)。クラリティ法案が止まっても、SECはこうした規則づくりを続けると表明しています。

当局のルールと法律は何が違う?
当局が規則を作れば、法律がなくても一定のルールはできます。ただし、法律と比べると弱い点があります。
| 比較項目 | 法律(クラリティ法案) | CFTC・SECの規則 |
|---|---|---|
| 決める人 | 議会(上下両院の可決と大統領の署名) | 各当局(委員の採決) |
| かかる時間 | 長い(今回は下院通過から1年以上) | 比較的短い(ただし意見募集などで数か月〜) |
| 変わりやすさ | 変えるには新しい法律が必要 | 次の政権や裁判所の判断で見直される可能性がある |
| 決められる範囲 | SECとCFTCの権限の線引きそのもの | 今ある法律で認められた権限の範囲内だけ |
JPモルガンのアナリストも、CFTCの規則は将来の委員会や裁判所が変更・取り消しできるため、法律より長続きしにくいと指摘しています。業界がクラリティ法案の成立にこだわってきたのは、この「ルールが後から変わるリスク」をなくしたいからです。
クラリティ法案は今後どうなる?成立までの日程と3つのシナリオ
クラリティ法案が2026年中に成立する可能性は低く、次の現実的な機会は11月3日の中間選挙後の「レームダック会期」とみられています。10月1日時点で、再投票の日程は決まっていません。米財務長官の元顧問タイラー・ウィリアムズ氏は9月23日、法案を「ほぼ死んでいるが、完全には死んでいない」と表現しました(The Crypto Times)。
今後の注目日程
| 時期 | 予定 | クラリティ法案への意味 |
|---|---|---|
| 2026年10月 | 上院は中間選挙に向けて審議日程が限られる | 再審議の動議はあるが、10月1日時点で再投票の予定はなく、選挙前の再投票は難しいとの見方が多い |
| 2026年10〜12月 | ANPRMの意見募集(官報掲載から60日) | 法律がなくても、CFTCのルールの中身が見えてくる |
| 2026年11月3日 | 米中間選挙 | 上下両院の勢力が変わると、法案の扱いも変わる |
| 2026年11月〜2027年1月初め | レームダック会期(選挙後から新議会まで) | 今の議会で成立させる最後の機会 |
| 2027年1月3日 | 第120議会が始まる | 今の議会で成立しなければ法案は廃案になり、出し直しが必要 |
予測市場でも見方は厳しく、9月24日時点で「H.R.3633が2026年12月31日までに署名される」確率はPolymarketで約7%でした(10月8日時点は約6%)。Kalshiでは、市場構造法が「2027年7月1日までに成立する」確率が約16%、「2027年10月1日までに成立する」確率が約14%、「2028年1月1日までに成立する」確率が約17%で、成立するとしても2027年以降という見方が中心です(DeFi Rate、10月8日確認)。
考えられる3つのシナリオ
| シナリオ | 起こること | 相場への一般的な影響 |
|---|---|---|
| ① レームダック会期で再投票・成立 | 倫理規定などで与野党が合意し、年末までに上院・下院・大統領署名まで進む | 規制の見通しが立ち、取引所株や主要銘柄に買いが入りやすい |
| ② 今の議会で成立せず、2027年に出し直し | 新しい議会で法案を出し直し、委員会の審議からやり直す | 法律の空白が続くが、CFTC・SECの規則で一部は埋まる |
| ③ 当局の規則が中心になる | 法律ができないまま、CFTC・SECの規則が実質的なルールになる | 短期の安心材料にはなるが、政権交代や裁判で覆るリスクが残る |
どのシナリオでも、「ニュースが出た瞬間に大きく動き、すぐ戻る」値動きが起きやすい点には注意が必要です。本記事は特定の売買をすすめるものではありません。
日本の投資家への影響は?日本の口座や税金はすぐには変わらない
クラリティ法案は米国の法律案なので、否決されても日本の取引所の口座や日本の税金がすぐ変わることはありません。ただし、世界の暗号資産の値動きは米国の規制ニュースで大きく動くため、日本で取引している人の資産にも間接的に影響します。
XRPはどう動いた?採決前に上がり、否決の翌日に約1割下げた
米国の規制の行方で値動きが大きくなりやすいのが、SECとの裁判を経験したXRP(リップル)です。採決への期待が報じられた2026年8月下旬には1週間で約46%上がり、否決の翌日には約1割下げました。ただし、その後は否決前の水準まで戻しています。
| 日付(UTC) | XRPの価格 | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 2026年8月15日 | 約1.00ドル | — |
| 2026年8月22日 | 約1.45ドル(1週間で約46%高) | ホワイトハウスの支持表明の報道などで採決への期待が高まる |
| 2026年9月15日 | 約1.42ドル | 上院の手続き投票で否決(49対50) |
| 2026年9月16日 | 約1.28ドル(前日比で約10%安) | 否決を受けて下落 |
| 2026年10月2日 | 約1.53ドル | 再投票の日程は示されていない |
出典:CoinGecko(XRPの日足、各日0時UTC。10月2日は日本時間17時台の値)。2026年10月2日取得。
XRPは国内の登録業者でも日本円で売買できます。たとえばOKJ(オーケーコイン・ジャパン)は、販売所より価格差の小さい取引所(板)でXRP/JPYを扱っています(2026年10月2日、同社の公開APIで確認)。ニュースで値動きが大きくなる時期は、買う場合も失ってもよい金額にとどめてください。
日本は先に法律を変えた:金融商品取引法の改正
日本では2026年7月15日、暗号資産を金融商品取引法(金商法)の対象にする改正法が成立しました(金融庁「国会提出法案等」)。米国が法案づくりで止まっている一方、日本は制度の変更が決まっている、という対照的な状況です。

| 比較項目 | 米国(クラリティ法案) | 日本(改正金商法) |
|---|---|---|
| 法律の状態 | 下院は通過、上院で審議入りできず | 2026年7月15日に成立 |
| 監督する役所 | SECとCFTCで分担する案 | 金融庁(金商法に一本化) |
| 暗号資産の位置づけ | デジタルコモディティと証券にあたるものに分ける案 | 金融商品として扱う。発行者がいる暗号資産には情報開示を求める |
| 新しく入る主なルール | 取引業者の登録、顧客資産の分別管理など(案) | インサイダー取引の規制、発行者の情報開示など |
| 税金との関係 | — | 申告分離課税(20.315%)への移行は、この改正の施行が前提 |
出典:金融庁「国会提出法案等」(令和8年4月10日提出、令和8年7月15日成立)。確認日:2026年9月25日
改正法の中身は「資金決済法」から「金融商品取引法」への移行の記事で解説しています。
税金:分離課税20.315%はいつから?
暗号資産の利益は、今は給与などと合算する総合課税で、所得によっては住民税と合わせて最大55.945%かかります。申告分離課税(20.315%)は改正金商法の施行日の翌年1月1日から始まるため、開始は2027年1月か2028年1月のどちらかです(2026年10月1日時点で施行日を定める政令は未公表)。海外取引所での取引やステーキング報酬が分離課税の対象になるかどうかも注意点です。くわしくは分離課税はいつから?(海外取引所・ステーキングは対象外)の記事と、利益額別の税金シミュレーションの記事をご覧ください。
改正金商法の施行日の翌年1月から、国内の登録業者で売買する暗号資産(登録簿に載る特定暗号資産)は申告分離課税の対象になる見込みです。国内の登録業者で取引を始めるなら、OKJ(オーケーコイン・ジャパン、関東財務局長 第00020号)の口座開設の手順と手数料をOKJの始め方にまとめています。
海外取引所を使っている人が確認しておきたいこと
クラリティ法案は米国内の取引業者向けのルールで、日本居住者が使う海外取引所に直接かかるものではありません。ただし、規制が大きく変わる時期は、取引所のサービス内容や対応国が変わることがあります。次の4点を確認しておくと安心です。
- 日本の金融庁に登録しているか:海外取引所の多くは日本で暗号資産交換業の登録をしていません。たとえばMEXCは、金融庁から2023年3月と2024年11月の2回、関東財務局から2025年6月20日に、無登録営業などについて警告を受けています。
- 本人確認(KYC)が必要か:MEXCは2026年2月5日から本人確認を必須にしており、本人確認をしていない口座は入金・出金ができません。
- 撤退・閉鎖の告知が出ていないか:2026年はCoinExの事業撤退やBitMEXの閉鎖などが続きました。お知らせのページを定期的に確認しましょう。
- 資産を1か所に集めすぎていないか:取引所の破綻や出金停止に備え、使わない資産は分けて管理します。
海外取引所を使うかどうかは、こうしたリスクを理解したうえで自分で判断することが前提です。取引所ごとの登録状況・手数料・本人確認の違いは海外仮想通貨取引所おすすめランキング(6つの比較表)で、MEXCの登録手順と注意点はMEXCの口座開設方法の記事で解説しています。撤退した取引所の出金期限は海外取引所の日本撤退まとめ、国内口座の凍結リスクは海外取引所の利用履歴と口座凍結の記事を参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. クラリティ法案は廃案になったのですか?
A. 2026年10月1日時点では正式な廃案ではありません。クラリティ法案は上院の審議入りの投票で否決されましたが、ティリス議員の再審議の動議が残っています。再投票の日程は決まっていません。今の第119議会が終わる2027年1月初めまでに成立しなければ廃案になり、新しい議会で出し直す必要があります。
Q. 日本時間では何日の何時に否決されたのですか?
A. 投票は米東部時間の2026年9月15日午後2時15分に始まり、日本時間では9月16日の午前3時台に結果が出ました。
Q. クラリティ法案の否決でビットコインは下がったのですか?
A. 否決当日、ビットコインは8万ドル近くから75,850ドルまで約4%下がりました。ただし9月19日には81,000ドルを超え、9月21日には一時87,000ドル台まで上がっています。同じ週にはFOMCの利上げやETFへの資金流入もあり、否決だけで値動きを説明することはできません。
Q. クラリティ法案とGENIUS法の違いは何ですか?
A. GENIUS法はステーブルコインだけを対象にした法律で、2025年7月18日に成立済みです。クラリティ法案は、ビットコインやイーサリアムを含む暗号資産の市場全体について、SECとCFTCの役割分担を決める法案で、まだ成立していません。
Q. CFTCの独自ルールができれば、法案はいらなくなるのですか?
A. 一部は埋まりますが、法律の代わりにはなりません。CFTCの規則は今ある法律の権限の範囲でしか作れず、次の政権や裁判所の判断で見直される可能性があります。SECとCFTCの権限の線引きそのものを決めるには法律が必要です。
Q. 日本の取引所や日本居住者にも影響がありますか?
A. クラリティ法案は米国の法案なので、日本の口座や税金が直接変わることはありません。日本では2026年7月15日に改正金融商品取引法が成立しており、日本のルールはこちらで決まります。ただし、米国の規制ニュースは世界の暗号資産価格を動かすため、値動きを通じた影響はあります。
Q. 次に注目すべき日程はいつですか?
A. 2026年11月3日の米中間選挙と、その後のレームダック会期(2027年1月初めまで)です。並行して、CFTCがホワイトハウスの審査に出した暗号資産市場の規則が、官報に規則案として掲載されるかどうかも注目点です。
まとめ:クラリティ法案は否決、ルールづくりは当局の規則へ
- クラリティ法案は、暗号資産をSECとCFTCのどちらが監督するかを決める米国の市場構造法案
- 2026年9月15日(日本時間16日未明)、上院の審議入りの手続き投票は49対50で否決。民主党は出席者全員が反対し、共和党からも4人が反対
- 最大の争点は政府高官の利益相反を防ぐ倫理規定。ステーブルコインの報酬、DeFiの扱いも対立点だった
- CFTCは暗号資産市場の規則をホワイトハウスの審査に出し(10月5日に事前通知(ANPRM)を出し、意見募集の段階です)、SECはトークン化株式の免除を出すなど、当局が法律を待たずに動いている
- 10月1日時点で再投票の日程はない。次の機会は11月3日の中間選挙後のレームダック会期で、今の議会で成立しなければ2027年に出し直し
- 日本の口座・税金はすぐには変わらない。日本では2026年7月15日に改正金商法が成立している
本記事のデータは2026年10月1日時点のものです。法案や当局の規則に新しい動きがあれば、この記事に追記します。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の暗号資産の売買や取引所の利用をすすめるものではありません。暗号資産は価格の変動が大きく、元本を失う可能性があります。投資の判断はご自身の責任で行ってください。
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