金融庁は2026年9月17日、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)との意見交換会(7月15日開催)の内容をまとめた資料を公開した。この中で同庁は、暗号資産交換業者の一部に、収益性の高い「販売所」形式へ利用者を誘導している可能性があるとの懸念を示していたことが明らかになった(金融庁「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点(日本暗号資産等取引業協会、令和8年7月15日)」)。海外取引所を含め口座開設先を選ぶ際に直結する話であり、Coin Mapの読者にも影響がある内容のため、ポイントを整理する。
販売所ではなく取引所(板取引)でBTC・ETH・XRPなどの主要銘柄を日本円で売買できる国内の登録業者には、たとえばOKJ(オーケーコイン・ジャパン、関東財務局長 第00020号)がある(2026年10月3日、同社の公開APIで確認)。口座の作り方はOKJの口座開設・始め方で解説している。販売所と取引所の違いは、この記事の2つ目の見出しで表にまとめた。
何が発表されたのか
金融庁が公表した資料によると、同庁は暗号資産交換業者の一部において、取引所形式よりも収益性の高い販売所形式へ利用者を誘導している可能性があるとの懸念を、JVCEAとの意見交換会で伝えていた。これは金融審議会の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告書(2025年12月10日)で指摘された論点を踏まえたものだ(金融審議会WG報告(PDF))。
販売所と取引所の両方を提供する事業者では、顧客がどちらを選ぶかによって手数料や価格形成の仕組みが異なる。金融庁は、2024年11月に施行された改正金融サービス提供法で導入済みの「顧客の最善の利益を勘案し誠実かつ公正に業務を遂行する義務」を踏まえ、事業者とUI(利用者が操作する画面導線)について対話を続ける方針を示した。
「販売所」と「取引所」は何が違うのか
この2つは同じ暗号資産交換業者のサービスでも仕組みが大きく異なる。違いを表にまとめる。
| 項目 | 取引所(板取引) | 販売所 |
|---|---|---|
| 売買の相手 | ほかの利用者 | 交換業者そのもの |
| 価格の決まり方 | 利用者の注文(需給)で決まる | 交換業者が提示する |
| 主なコスト | 取引手数料(無料〜低率の業者が多い) | 買値と売値の差(スプレッド) |
| 注文の方法 | 指値・成行を選んで板に出す | 金額を入れてボタンを押すだけ |
| 注意点 | 板が薄い銘柄は約定しにくい | 手数料無料と表示されても、スプレッド分が実質コストになる |
次の2点を押さえておくと、見分けやすい。
- 取引所(板取引):ユーザー同士が売買注文を出し合い、需給で価格が決まる方式。取引所が受け取るのは手数料のみで、価格差(スプレッド)は市場実勢に近い
- 販売所:事業者自身が売り手・買い手となり、提示レートで直接売買する方式。表面上の手数料が無料・低額に見えても、売値と買値の差(スプレッド)に事業者の利益が上乗せされており、実質コストが取引所形式より大きく高くなりやすい
初心者向けのアプリでは、最初に開く取引画面が販売所になっていて、そのまま気づかずに割高な価格で売買してしまうことがある。今回の金融庁の懸念は、まさにこの「画面の導線が販売所に誘導されがちである」という点を指している。なお、各社の積立サービスも販売所の価格で買い付けるものがある(例:GMOコイン「つみたて暗号資産」の注意事項)。
読者が損をしないためにできること
特にビットコインやイーサリアムなど主要銘柄を売買する場合は、次の点を確認したい。
- 使っている取引所アプリに「取引所」(板取引)モードがあるかを確認し、対応していればそちらを優先する
- 板取引で主要銘柄を買える国内の登録業者には、OKJ(オーケーコイン・ジャパン)もある(2026年10月2日の同社の公開APIで、BTC・ETH・XRPなど47銘柄に日本円の板。販売所と取引所で10万円あたりいくら違うかの実例はリンク先)
- 販売所しか提供していない銘柄・取引所を使う場合は、購入前に他の取引所の実勢レートと比較し、スプレッドの大きさを把握しておく
- 海外取引所を比較する際も、板の厚み(流動性)とスプレッドの実態を確認する(関連:海外仮想通貨取引所おすすめランキング(手数料・KYC・日本語サポートを比較))。海外取引所の現物も板取引が基本で、たとえばMEXCの現物手数料はメイカー0%、テイカーは主要銘柄で0.05%(それ以外の多くの銘柄は特別手数料率の0.08〜0.2%)だ(MEXC公式:手数料)。ただしMEXCは日本の金融庁に登録されていない取引所で、金融庁から2回(2023年3月・2024年11月)、関東財務局から1回(2025年6月20日、無登録で店頭デリバティブ取引を勧誘する者として)警告を受けています(金融庁、関東財務局)。MEXCは2026年2月5日から本人確認(初級KYC以上)が必須で、本人確認をしていないと入金・出金ができません(MEXC公式告知)。手順はMEXCの口座開設・登録方法を画像付きで解説にまとめている
実際の価格での差額と、国内4社の板で買える銘柄は販売所と取引所の違いは?10万円のビットコインで約3,000円の差|国内4社の板で買える銘柄・手数料と買い方で解説しています。
なお、コインチェックは2026年10月1日、取引所(板取引)のBTC/JPY以外の銘柄の手数料を、10月19日14時から段階制(一般ユーザーはメイカー0.10%・テイカー0.12%)にすると発表したが、10月16日に導入の延期を発表した。新しい導入日時は未定で、それまでは今の料率のまま(コインチェック公式のお知らせ、2026年10月17日確認)。今回の金融庁の懸念との関係は公表されていない。料率表と国内他社との比較はコインチェックの段階制手数料は延期|導入されたら料率はいくら?にまとめている。
あわせて示された今後の規制動向
同じ意見交換会では、本人確認方法の厳格化にも言及があった。2026年3月6日に改正された犯罪収益移転防止法施行規則により、2027年4月1日から、対面での本人確認はICチップ付き書類の読み取りが必須となり、それ以外の確認方法は原則廃止される(金融庁「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点(日本暗号資産等取引業協会、令和8年7月15日)」)。暗号資産交換業者もこの対象に含まれるため、口座開設フローが今後変わる可能性がある。
国際的には、FATF(金融活動作業部会)が2026年2月13日の声明でイランに対する追加の対抗措置(暗号資産サービスプロバイダーの支店設置禁止、新規コルレス関係の構築禁止等)を要請しており(FATF声明)、金融庁も同じ意見交換会で、この声明を踏まえた対応を交換業者に求めている。金融庁の一連の動きについては、暗号資産を金融商品取引法の対象にする改正法の中身を解説した暗号資産の規制、「資金決済法」から「金融商品取引法」へ移行もあわせて参照してほしい。
まとめ
今回の金融庁の懸念表明は、罰則を伴うものではなく、事業者との「対話を続ける」という現時点では緩やかな方針だ。しかし、販売所と取引所のスプレッドの違いは、知らないまま使い続けると着実にコストとして積み上がる。口座を持っている取引所アプリの取引モードを一度見直してみることをおすすめしたい。(本記事は2026年9月17日公表の金融庁資料に基づき、9月25日に出典を再確認)




